おおよそ10年で自らが置かれているポジションが変わるという事を体験してきました。現在の私の仕事がどんな経緯をもってここにあるかを事例にしてお話したい。
10年前と現在を比べてみて、同じ業界にて仕事をしているのに求められている役割か異なってきています。
大きな組織内での変化、人的資源の配置転換や責任範囲が変わっていくのは当然ありうることで、それは各人の体力的な問題やキャリアに関しての適材適所という事でよくあることなんですが、私のような「個人事業主・一人社長」であっても、そのポジション、なすべき課題も年を経るにつけてドラスティックに変わっていったのです。
私の職業の歩みは次のようなものです。
35年ほど前に「飲食コンサルタント」として無謀ともゆうべき独立を果たした私は、「コンサルティング事業」とはいえ仕事がなければただの無職であるといった環境下に身を置いたのです。
それまでの人脈と紹介者の存在もあり、最初の仕事は下請け的であり「飲食店のオペレーション指導」という立場で現場における接客指導だとか店長マネジメントといった領域を担当していました。
これらの仕事は、大手チェーン勤務時代の経歴、その後の繁盛料理店の支配人としての経歴を評価していただいた飲食業オーナー、社長さんに感謝する所が大でありました。
本来はアドミニストレーション担当「戦略立案参謀」として独立したかったのですが、まずは現場からといった仕事の原理原則を踏まえていったという事です。現場の店長や社長たちと一緒に汗を流し、苦楽を共にすることから一切は始まるという事なんでしょう。
上から目線、評論家的な発言、どことなく他人行儀な態度は厳禁という事を学んだのでした。
時代はバブル期の後半というか後でわかったことですがすでにバブル末期のころを思い出します。90年代中頃、飲食店の出店ニーズというのがありました。
ことに、異業種から「飲食事業」への参入を考えていた中小企業があり建築・内装業者にその出店相談なるものが持ち込まれていった時代。
自社の遊休資産、人的資源、バブルで稼いだ資金等の活用を目論んでいたようです。
企業の社長が飲食店が儲かりそうだという事で(確かに粗利は高いので経常利益率も20%といった店もありました)あり、自社により研究し例えば税理士に相談、例えば実際「人気の店舗」に相談、もしくはその店舗を設計・施工した業者に相談するといったケースがありました。
私自身独立して5〜6年たっていてそういった業界との関係も「商工会議所」を通じ構築していましたから、当然協働体制をもって、出店企画といった仕事を積極的に行っていったのです。
その内容は実に多岐にわたっており、店舗のコンセプトの立案、新規事業として飲食を選択した理念と理由の明文化、立地の選定、業種業態の設定、商品計画、人的資源の募集、社員教育、販促広告宣伝、事業計画の策定、オペレーションマニュアルの策定など一手にコーディネートした時代で、私の業界内でのポジションが「飲食事業総合プロデューサー」ということになって行ったのです。独立して10年頃の事、働き盛りで休みなどなく各地を飛び回っていた時代です
個性時代の到来・・・従来の大型店中心の業界が小規模ながら個性豊かな「料理人」の登場によって、コアな世界、専門店の台頭といったタコつぼ型のマーケットがもてはやされてきました、「コアコンセプト」の立案は一店舗ずつ違う顔を持つ店づくりという事で、「オーナーシェフ」独自のオペレーションがクローズアップされてきて、外部の「コンサルタント」の守備範囲が小さくなってしまいました。と同時に店舗を取り囲む状況も一変し、先ほど述べた立地から販促に至るまでの要素も個性的でかつ深い観点からのアナリストが必要となって行きます。総合から専門へといった職業の流れが変化していったのです。
当然私の立ち位置もより専門家としての深みが要求されていきます。
広く浅くではなく、特定の「気が合う・波長が合う」お客さまと深く付き合うというスタンスに徐々に変えていきました。つまり特定海しぇとの「経営顧問」的立ち位置の実現を目指したのです。この時も色々な紹介者によって私という経歴、性格から生じてきた「私ブランド」を理解してくれる会社・店を選んでいただいたと認識しています。これも感謝すべきことです。
結果として同世代の方々との新しい出会いもあり、経営顧問としては外部取締役的立場によっていくつかの店の成功事例を創っていくのですが、それは今の私の主力になっている「デザイン」「ブランディング推進」のためのツール制作のもとになっているのです。
併せて「商工会議所」の非常勤講師としての活動も含め、一時のアグレッシブさは影を潜めたものの、そこそこに飲食業界の役には立っていると自負しています。
さて、70代を超えた今数々の経歴をもとに「ブランディングデザイナー」「筆文字や隆庵」としていまだに筆を持ちアナログこそ「心の時代」を現わすのだという信念で、「デザインの仕事」に情熱をささげています。今後の10年の目標は、「アートと人生の関わり」といった画集の出版、そして新たな人材たちによる「飲食業界」活性化のお手伝いをしていくという目標を立てています。
という事で改めて「飲食事業」に乾杯・・・・